小学校や中学校で英語を習いはじめたとき、代名詞※1のひとつとして習う「it(イット)」。
物とか動物に当てはめればいいだけでしょ?
ただ「it=それ」と直訳で認識していると、日常会話のなかに思わぬ誤算が潜んでいることも! ネイティブ相手に自分の意図と違った誤解を与えてしまわないよう、「it」の正しい使いかたを説明します。
※1:人や物(動物含)など、名前の代わりに用いる名詞のこと。
学校で習う「it」の意味
学校で通常の授業を受けた人の多くは、おおよそにして2通りの使いかたを習っています。
①「それ」としての「it」
文章中に「it」と出てくれば、だいたいの人が「それ」と訳すのではないでしょうか?
ケンブリッジの英英辞書(オンライン)に、
used as the subject of a verb, or the object of a verb or preposition, to refer to a thing, animal, situation, or idea that has already been mentioned:
と記載されているとおり、「既出した動詞の主語や動詞、前置詞の目的語、あるいは物、動物、事象、思想などに対して使われる語」とのこと。
つまり、「he」や「she」に並ぶ代名詞ということですね。
②なんだかよくわからない「it」
「どういうこっちゃ!?」「なんだかよくわからないって!?」と言われてしまいそうですが、英文を訳しているとたまにどう読んでいいか微妙な「it」があることはありませんか?
これも学校では一様に「それ」と習うものですが、例えば
- It’s a beautiful day today!
一見シンプルなこの文章。これを訳すとしたら「今日は美しい(晴れた)日ですね!」ということになりますが、「それ」というのは一体なにを指しているのでしょうか?
ここで考えるべきは「美しい日(それ)」とはなにか? ということ。そう、文末に来ている「今日」のことです。
英英辞書によると、
used as the subject or object of a verb to represent a phrase at the end of the sentence:
とのことで、つまり「文末に来る動詞の主語や目的語を言い換えるために使われる語」という意味になります。
この「it」については「なんとなくそう習ったから付けておく」程度で、あまり論理的に考えて使う人はいないのではないかと思います。
英語で調べるとこの「it」を「dummy subject(ダミーの主語)」と言っていたりして面白い!
「it=それ」の丸暗記は時にキケン!
日本語もそうですが、英語にももちろん特有のニュアンスというものがあります。
外国人がこれを完璧にマスターするのはかなり難易度が高いことですが、最低限気を付けておかないと、時にひょんなことからあらぬ誤解を生んでしまうことさえあるのです。
例えば、こんな時。
韓国人の友達が最新の、肌がツヤッツヤになる化粧水を使っていたとします。そんな彼女と旅行に行ったとき、「私も欲しいなあ」と思ったあなたはこう言いました。
日本語にすると正解に見えますが、きっと韓国人の彼女にはゲッという顔をされることでしょう。
なぜなら「it」は「それ」。そのまま「その(あなたがいままさに使っている最中の)化粧水」ということになってしまうからです。
使いかけの化粧品をねだられても、ちょっと困ってしまいますよね。
じゃ、じゃあそんなときはどうしたら…?
もちろん「it」で表すと少し怪しいこんな状況の場合、違う単語を当てはめることで「あなたの使っているその化粧品と同じものが欲しい」というニュアンスに書き換えることができます。
日常会話で頻出する「one」の正体
「それ」と言いたいのに、微妙なニュアンスの違いのせいで使えない「it」。
そんなときに便利なのが「one」という単語です。
one!? それって「ひとつの」って意味じゃないの!?
学校では通常物を数えるときに使う「ひとつの」として教わる「one」ですが、実はほかにもいくつかの意味を兼ね備えています。
例えば、
used to refer to a time in the future that is not yet decided:
「まだ決まっていない未来の時間に対して使われる語」。
- One day(いつか)
などがいい例ですね。
学校では「one day=いつか」と熟語のように習いますが、「one summer」とすれば「いつかの夏」、「one Christmas」とすれば「いつかのクリスマス」というように、不確定な未来に対して使うことができます。
そして次が本題。
used to refer to a particular thing or person within a group or range of things or people that are possible or available:
直訳すると「可能(利用可能)な人、もしくは物、グループのなかで特定のものを言及する際に使われる語」。
つまり、上記で挙げた化粧品の例で言うと、
数ある化粧水のなかでもあなたが使っている商品、でもいま使っているのじゃなくて同じやつが欲しい!
ということになります。
そういうことなので、もしその化粧水を見て「私も欲しいなあ」と思ったときには「I want it!」ではなく、
と言うようにしましょう。
ちょっと難しい英語の使い分け
- I want it!
- I want one!
日本人からしたらどちらもそう変わりなく聞こえてしまいますが、ちょっと英語ができる人と話すとかなりの違いが出て来てしまう英語のニュアンス。
慣れるまでは意識して使い分けるようにすれば、自然な英語で世界各国の人とうまくコミュニケーションが取れるようになりますよ!