中学校レベルで習うはずの冠詞(「a」と「the」)ですが、その使い時を詳しく教えてもらっている人は多くないのではないでしょうか?
「a」と「the」ぐらいテキトー、テキトー!
と思っている人もいるかもしれませんが、使い道によっては意味が変わってくることも。ここでおさらいして、英語上級者を目指しましょう!
冠詞とは
冠詞とは一般的に、名詞の前に付く単語(「a」、もしくは「the」)のことです。
- This is a pen.
おそらく小学校、あるいは中学校で英語を習いだしたとき、一番最初に習う文章ではないでしょうか。
この文章自体に実用性はほぼないけどもね!
「This is a pen.」。上記文章で赤字になっている「a」がいわゆる冠詞と呼ばれるものです。この「a」と「the」の使い分けがなぜ難しく感じられるのかというと、日本語にはない概念だからにほかなりません。
だからこそ、理論上“そう”理解していてテストで100点満点の解答ができるとしても、いざ英語で会話をしてみると冠詞をつけ忘れている日本人が多々見受けられるのです。
けれど、「This is a pen.」をはじめ、多くの場合「ここには『a』が入るからなー」ぐらいのサラリとした感じで流されてしまうのが悲しい現実。
しかしここをバッチリ押さえておくことで、細かなニュアンスを上手に伝えることができるんです!
「a」の使い時
まずは、「a」の使い時について。「そんなの簡単でしょ!」と思う人も、いまいちどおさらいしてみてはいかがでしょうか?
①「1つ」という意味
学校で習う「a」という意味といえば、
- I had an orange.
というように、「2つ、3つと(複数)ある中のひとつ」のようなイメージかもしれませんね。もちろん、これも正解!
バスケットいっぱいに入っているオレンジをひとつだけ食べた、というような場合、上記の表現ができます。
ちなみにあとに続く名詞が「a」「i」「u」「e」「o」と母音の場合は「a」ではなく「an」になります。
②ぼんやりしたイメージ
なんのこっちゃ!?
という漢字ですが、実践的な英語はニュアンスやイメージで覚えるに限ります。まず、前述した「ひとつの」という意味とは別に、頭に思い描いた物(名詞)にぼんやりと靄(もや)をかけてみてください。
これが「a」の基本イメージです。
「a」の基本イメージは、相手との共通認識がないもの。
ここで例をひとつ挙げてみましょう。
Once upon a time, in a tiny kingdom, there was a gentle and lovely girl named Cinderella.
(引用元:Disney「Cinderella」)
これはかの有名なディズニー作品「シンデレラ」の冒頭。
「昔々あるところ、小さな王国に、シンデレラという優しくてかわいらしい少女がおりました」と意訳できる部分ですが、この時点では読み手にとってこの少女が一体誰で、どこに住んでいて、どんな性格でという一切の情報がまだわからないわけですよね。
つまり、少女ということはわかるけれど、イメージとして成立させるにはまだぼんやりした状態ということです。
でも、ここで「優しくて」「かわいらしい」「シンデレラ」という情報が入ったことで、話し手と読み手、両者に「優しくてかわいらしいシンデレラという少女がいた」という共通認識ができました。
つまり、「ぼんやりとしたイメージ」「共通認識がないもの(者・物)」に「a」は使われるんです。もし童話や小説で最初から「the」と出てくる場合は、執筆者があえてそうしていると考えるべきでしょう。
例としてもうひとつ挙げてみると、昔、実体験としてこんなことがありました。
それは、学校行事でダンスの練習をしていたときのことです。発表会を控えたある日、リーダー(友人)が「Sing a song!」と言いました。「(踊りながら)歌を歌って!」ということだったのですが、
“Sing a song?” Not sing the song?
とからかうように友人。そのときに改めて「a」と「the」の違いを認識したわけですが、ここで「a」と言ってしまうと、「a」にはぼんやりしたイメージしかないので「どんな歌でも歌ならOK」という意味になってしまうんですね。
英語って繊細…。
「the」の使い時
「a」はまだ「ひとつの」というわかりやすい意味もありますから、なんとなく使える人も多いもの。しかし特に鬼門とも言えるのがこの「the」の使い道です。
①イメージがはっきりしているもの
「the」は、先に挙げた「a」の「②ぼんやりしたイメージ」とは正反対の「イメージがはっきりしているもの」に対して使うことができます。
先ほどのシンデレラを例に考えると、
Once upon a time, in a tiny kingdom, there was a gentle and lovely girl named Cinderella.
(引用元:Disney「Cinderella」)
この時点では読み手にとってシンデレラはぼんやりしたイメージの少女でしかなかったわけですが、どんな少女なのか説明が入ったことで「優しくてかわいらしい少女がいた」ということがはっきりイメージできるようになりました。話し手と読み手(聞き手)の間に共通認識ができたのです。
そう、「the」は互いの間に共通認識がある事柄(人)について話すときに使える冠詞。
“Sing a song?” Not sing the song?
体験談のなかにあった友人のこの指摘も同じこと。
「the」を使うことで、暗に「自分たちが踊っている(共通認識のある)歌のことでしょ?」と強調しているのです。
つまり簡単に言うと?
「a」=
①複数あるうちのひとつ(可算名詞のみ)
②共通認識がない、不特定(ぼんやりしたイメージ)
「the」=
①共通認識がある(はっきりしたイメージ)
冠詞がつかないものもある
どんなものに「a」がつくのか、そして「the」がつくのかを説明してきましたが、なかには例外的に冠詞がつかないものも存在するので要注意。
例えば「a」。
- information
- fish
- sheep
- water
などの不可算名詞にはつけることができません(「the」はOK)。
waterはわかるけど、なんでfishやsheepも不可算名詞なの!?
この話題はまた別にするとして。
例えば「the」。
- I booked a conference room.(会議室を予約したよ)
というように、互いに共通認識があったとしても“どの”会議室か特定できない段階では「a」を使います。これは共通認識こそあるものの、ある意味まだぼんやりしたイメージだからですね。
また、そのどちらもつかないものもあります。
それは、一般論としての「何か」を語っているとき。
- I came here by bus.(バスでここに来ました)
この場合、「どのバス」かについて話しているのではなく、一般論で言うところの「バス」のことを話題に挙げているので「a」も「the」もつかないということになります。
- Love is blind.(愛は盲目)
ここで言う「愛」も特定の愛について話しているわけではなく、「愛」そのもの(広義的な意味での「愛」)を取り上げています。そのため、こういった場合にも冠詞はナシ。
なので、もし特定の愛について語りたい場合は「My love is~」「Your love is~」という風に言うことができます。
些細なニュアンスが意味を変える(こともある)
- Can I borrow the pen?
- Can I borrow a pen?
どちらも日本語にすると「ペンを借りてもいい?」という意味に違いありませんが、前者は「(その)ペンを借りてもいい?」ということで、後者は「(どれでもいいから)ペンを借りてもいい?」ということになります。
日本人にとって「ちょっとぐらい」程度の違いでもネイティブにとってはそうでないこともあるので、慣れるまではよく考えてみるようにしましょうね!